平成21年度は、補習授業校に子どもを通わせている長期滞在の母親を対象に聞き取り調査を実施した。その結果、以下の点が明らかになった。第1は子どもの成長過程で、日本の学校への体験入学など日本と定期的なかかわりをもってきたことである。第2は子どもを補習授業校に通わせるのは日本語習得のためと日本人の友人との関係づくりが目的であるということである。第3は日本語学習には子どもと自分をつなぐという情緒的な意味づけと将来役に立つという道具的な意味づけをおこなっていることである。第4に母親たちは、アメリと日本の二つの教育を受けさせることへの葛藤があるが、それを「バイリンガル」にさせるということで正当化しようとしていることである。第5に子どもは現地校でエスニシティの境界を固定されるようになるが、そのことを肯定的にとらえさせようとしていることである。第6に子どもが日本語を前向きに学習していると母親たちがみていることである。そして、第7は子どもの進路選択に対しては子どもの主体性を尊重しようとしているが、その背後には母親が現地校の学習に対応できず、さらに現地の教育システムに疎いことがあげられる。
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