本研究の目的は、今日の不登校現象の社会・文化的多様性を解明するとともに、その多様化の観点から、現行の支援ネットワークの実態を批判的に検討することにある。社会の構造変動と教育改革の進行に平行して登校を忌避する子どもは量的拡大を続けてきたが、それは学校教育からの離脱・排除の過程が質的な変化、多様化を遂げている可能性を示している。本研究は、こうした仮説に立ち、今日の不登校の多様化の実態を社会の構造変動と社会的不平等との関連から把握し、かつ不登校支援のためのネットワーク構築の意義と妥当性を教育臨床社会学の視点から検討することを企図している。 今年度はスクールソーシャルワーカー(SSWer)が試行的に配置されたのに伴い、いくつかの自治体でヒアリングを行い、SSWerの担い手、配置のされ方、役割、課題などについて具体事例を収集した。自治体によりSSWerの配置の仕方や、その担い手は異なっている。スクールカウンセラーと別種の職として割り当てる自治体もあるが、スクールカウンセラーの中で地域とのつながりを重視しソーシャルワーカー的な役割を果たしてきた者がその任に就くこともある。試行段階ということもあり各自治体とも試行錯誤で実施している状況にある。 また、ある自治体において小中学校の欠席に関する縦断的調査を実施し、欠席の社会経済的背景として貧困や家庭の問題が多々みられ、いわゆる脱落型の不登校が相当数を占めつつあることを明らかにした。
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