3か年の研究計画の初年度にあたる平成19年度には、以前の研究成果をふまえたうえで、東アジア諸国・地域(対象は中国、台湾、香港、韓国、日本)の高等教育制度および大学入学者選抜制度に関する文献資料の収集・分析を行うとともに、個別機関を訪問して聞き取り調査を実施した。前者については、関連する日本語・英語・中国語文献の収集を行い、現行制度の分析を進めた。後者に関しては、香港の2大学(香港大学、香港中文大学)の入学者選抜制度に関する聞き取り調査を行い、また他の研究課題等で訪問する機会を利用し、東北師範大学、華東師範大学、上海師範大学(以上、中国)、台中師範大学、台湾師範大学(以上、台湾)等で関連情報の収集を行った。本年度の研究成果としては、台湾の高等教育の現状を整理し分析した『台湾の高等教育-現状と改革動向-』(小川佳万と共編著、高等教育研究叢書95、広島大学高等教育研究開発センター)、台湾における新たな選抜方法の導入と実施状況の分析を行った「台湾の大学入学者選抜における「繁星計画」の導入と展開」(『大学論集』第39集、広島大学高等教育研究開発センター)、中国における「自主招生」の募集要項を訳出してまとめた『中国の大学入学者選抜における「自主招生」の現状(資料集)』(楠山研と共編、本研究課題平成19年度中間報告書、長崎大学アドミッションセンター)がある。このうち最後の成果は、これまで部分的にしか明らかでなかった中国の「自主招生」の実態を募集要項レベルで明らかにしたものであり、機関ごとの共通点と相違点が明確になった点で意義のあるものだと考える。
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