研究概要 |
本年の研究においては、日本と韓国で行われている初年次教育の実践事例の情報収集、及びこれをとりまく政治経済的・社会的背景を歴史的な視点をふまえて分析した。 この結果、日韓ともに、近代教育の展開過程における入試制度のあり方、及び高等教育段階に望まれた人材育成像の転換が、大きな影響を与えていることが分かった。 一方で、都市-地方間における高等教育選好状況について、韓国は首都圏-地方の「一元的な構造」のもと、地方の恒常的な学生流出を食い止めるための戦略の一環として初年次教育の展開が図られているのに対し、日本ではいくつかの都市圏に集中が分散し、,かつ集中がおきている地域の大学間での競争という側面も強く、すなわち「二元的な構造」のもとで初年次教育の展開が図られているため、前者の求める初年次教育と後者の求める初年次教育では若干の差異がある。また国・公・私立などの設置者、大学の規模によっての差異もあり、韓国の場合、宗教系大学など海外の影響を受けやすい地方の私学と、ソウル大など国際間競争を強く要請されている研究中心大学で、特色をもった初年次教育プログラムは「二極化」の様相を呈している状況が明らかとなった。 なお研究の過程で、入試制度と初年次教育との関係が新たにクローズアップされ、これに関する日韓共同研究立ち上げの可能性が広がったのも実績の一つである。
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