研究概要 |
本研究では,1970年代末から長期滞在する外国人,いわゆるニューカマーに関わる教育問題において,今日最も注月されている「不就学」の問題において,その実態が少数に止められている地域-神奈川県大和市-で,そのよりな実態が生み出されている背景を探ることを目的とした。 最終年度にあたる本年度は,次の2点に関わっての結論を得た。 第1に,当該地域で活動する外国人青少年の当事者団体「すたんどばいみー」の歴史を追うことで,地域の外国人青少年の当事者意識の変遷を明らかにすることを通して,「不就学」の実態を少数に導く過程を明らかにした。その際に,母国での不就学経験が,日本の不登校や不就学に与える影響を検討するため,不就学(中国)と不登校(日本)の両経験をもつ中国人の子どもの中国での経験を明らかにする現地調査を補足的に行った。 第2に,昨年度実施した「国際教室」のインタビューを分析し,当該地域固有の歴史的文脈として,1980年代のインド難民受入のインパクトを明らかにした。しかし,そうした状況のもとでも,外国人児童生徒の受け入れ方法に,学校ごとにばらつきがあることを確認し,それは課題意識,職務の選択,外国人児童生徒の滞在期間という資源の編成による差であることを明らかにした。さらに,こうした状況は,滞在の「永続性」を前提としつつも,進学に焦点化した指導の組織化に向かい,マイノリティーマジョリティ間の権力関係を隠蔽するソフトな同化主義に落ち着く可能性もあれば,学習をめぐる権力関係への気づきから,マイノリティのエンパワーメントに向かう可能性もあり,両方向の可能性が示唆され,「不就学」を小数に止めるためには,不断の実践の問い直しが必要であることが結論として得られた。
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