本年度は前年度に設定した2つの下位テーマ、(a)「教育実践場面における『学校的社会化』の研究」(b)「『子どもへの<まなざし>』の歴史的成立過程の研究」をもとに、それぞれの角度から「子どもへの<まなざし>」の接近を試みた。まず(a)においては子どもが教師による<まなざし>のもと学校生活に溶け込んでいく「学校的社会化」のメカニズムを明らかにするべく、これまで蓄積した小学校授業場面の映像データ、トランスクリプト、フィールドノーツ等を用いた分析を行い。その成果を第61回日本教育社会学会で実表した。その結果本テーマは「社会化」「評価」「授業の成立」「学校的身体の成立」等の重要テーマに関連しながら、教育学研究において重要な位置づけをもつものとして注目を集めている。さらにこの研究成果は本学卒業生である小学校教員との年2回の研究会でも報告され、実践者である教員たちとの共同的な意見交流も推進している。また(b)においては、前年度より明治期以降の小学校の学籍簿・個性調査簿等の歴史資料の収集に着手してきたが、今年度は今後より一層の資料収集と分析を進めていくための基礎構築として、山形県内の複数の小学校、茨城県内の小学校を訪問し、資料収集とともに各学校所蔵資料のリスト化、内容の記録・データベース化に加え研究チーム内におけるデータセッションに取り組んだ。これら歴史資料は現在把握しているだけでも膨大な数量にのぼり、今後も継続して収集・整理・加工のうえ、分析を進めていくことになる。なおこの調査は日本の近代学校制度成立期における「児童理解・評価・指導」体制の確立と浸透に関する歴史社会学的接近であり、本研究のメインテーマである「子どもへの<まなざし>」の多角的な研究を推進する上で重要な意義を持つものであり、本年度までの基礎的調査・研究をもとに今後大きな発展をみせるものとして期待されている。
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