2007年度に本プロジェクトによって達成された主な成果は以下の3点にまとめることができる。 (1)多様な分野における地球市民性教育に関連する理論を扱った先行研究を検討し、本プロジェクトが基づくべき理論的基盤を形成する目的で、それらの理論を批判的かつ体系的に分析し整理した。本研究テーマは教育学の分野では比較的新しいものであることもあって、本領域の理論構築は日々発展・変化しつつあるため、この段階で一定の理論面のとりまとめを行なえたことには重要な意義があったと言える。 (2)オーストラリアとニュージーランドの学校と文部省を訪問し、学校教育における地球市民性教育に関連する資料を収集した。教育現場において、これまでの理論がどのように実践されているかを検証することによって、どのように理論が実践に結び付けられ得るのかを見ることができたことは大きな収穫であった。 (3)地球市民性に関連する学術研究会と学会に参加し、情報交換をすると共に、論文によって理論的研究結果の一部を報告した。2007年度に行なわれた研究は広範囲に及ぶ国や多様な教育的文脈に関連する地球市民性教育のための理論的枠組みが必要であるという認識の上に立って、本分野における基礎的研究基盤を整える目的で行なわれたものであるが、その目的は概ね達成できたと言える。しかしながら、これまで行なわれた理論的研究の多くは、先進諸国の教育制度に関連するものであったことも事実である。本来の地球市民性教育とは、特定の先進諸国だけに限られたものではなく、発展途上の国々の教育制度にも関連するものでなければならないことは言うまでもない。したがって、2008年度と2009年度の2年間において、発展途上国をも含む更に多様な国々の教育制度にも関連する「真の意味の世界市民性教育の理論」を研究したい。
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