本研究は3年間にわたる継続的研究であるが、その2年度目にあたる2008年度は、2007年度に行った研究成果を基礎においた上で、更に理論面的枠組みを確立し、実践面の実態を把握することを目的とする研究を行った。その成果については、主に以下の3点にまとめることができる。 (1)理論的枠組みの研究:2007年度に実施した「グローバル市民性研究の枠組み」に関する理論研究を基に、政治学・社会学・哲学・地理学・文化人類学におけるグローバル市民性に関連する理論的研究を収集し分析した。その結果、本分野が20世紀の後半に始まった比較的新しい研究分野であることが原因していると思われるが、現在の段階では、各分野におけるグローバル市民性の概念の間に相違があり、どの分野でも共通に受け入れられているような確立した普遍的な理論的枠組みが存在しないことが分かった。 (2)教育実践の研究:ヨーロッパ、アジア、オセアニア、南北アメリカの国々におけるグローバル市民性教育の政策・カリキュラムを収集し分析した。その結果、(1)の理論的枠組みと同様に、理論面だけでなく実践面においても、多様な思想や哲学を背景として、極めて多様な市民性教育が世界の各国で実践されていることが分かった。 (3)質問紙調査:大学生と生徒を対象としたグローバル市民性に関する質問紙調査を実施した。その結果は現在分析中で、2009年度に発表する予定である。 現在は、上記の(1)〜(3)をまとめる作業を進めており、更に検討を加える必要がある課題についてもまとめているところである。
|