本年度の研究では、計画していたとおり、イギリス、エクセター大学をベースとして、1)教員養成課程(PGCE)のカリキュラム収集、2)教育実習プログラム担当者(行政官)への聞き取り調査、3)教職課程入学者の選抜方式(入試)観察、4)昨年度収集した、教育実習生の実態調査(参与観察)のテープ起こし、の4点を遂行した。この過程で、一年生教職課程が、どのような学生を選抜し、入学させ、実習と大学の講義の往復によって訓練され、最終的に即戦力の教員となっていくかの全容がほぼ明らかになった。これまで分析した歴史的PGCEの誕生過程と合わせて、イギリスにおける教員養成(initial teacher training)が、このような形態をとるようになったプロセスと、その教育効果が明らかになった。わが国と異なり、学校現場が教員養成に大きくかかわっていくというschool based trainingの効果は大きく、我が国の教員養成では見られない、質の高い教育実習になっていることは、日英比較研究において分かる、新しい知見といえる。今後、我が国の教員養成学部、学科、課程への入学生の選抜方式と教育実習指導体制を、根本的に改革していく必要性が、本年度の研究成果からいっそう高くなったといえる。 これらの成果は、昨年度の中部教育学会において発表し、我が国の教員養成との違いと、今後の改革への具体的な提言として参加者との議論を持つことができた。
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