本研究は、4年制の専修学校卒業者に対して2005年より施行された「高度専門士」の称号と大学院入学資格の付与によって、修業年限においても制度上においても大学と同列とみなされるようになった4年制専門学校に注目し、実証的なデータ分析によって高度専門士制度が中教審答申に沿って「柔軟な高等教育システム」として機能しているのか検証すると同時に、専門学校のもつ役割のなかに「大学院との接続」という「研究機能」を付加することが可能かを問うものである。 平成20年度は高度専門士課程を終了する4年生104名を対象にアンケートならびにインタビュー調査を実施した。結果としては、大学院進学者は僅少であり、高度専門士がその設置の狙い通りに機能しているとは言い難く、むしろ現状では大学院入学資格すら「絵にかいた餅」状態であることが明らかとなった。高度専門士を付与し、大学院進学を制度上可能としても、現実には進学者はごくわずかであり、4年制専門学校生にとって大学院が進路選択のチャンネルとはなっていない現実がある。具体的には、「大学院進学について考えたことがありますか」という問いに対して、104名中9名が「少し考えた」と答えるのみであり、進学意識は1割にも満たない。しかし、潜在的にはその意欲は掘り起こせる可能性を秘めているという解釈も成り立つ。それは、インタビュー調査から大学院進学を阻害する要因が、(1)大学院入学試験の難しさ、(2)授業料などの経済的な負担、(3)大学院に関する情報提供の不足、の3つにあることがわかったからである。今後、大学院に社会人枠と同様に専門学校の枠を作ったり、奨学金政策を充実させたり、進学情報の提供をすることによって専門学校生が大学院に進学する可能性が広がり、同時に明確なメリット(より高度な資格付与、賃金上昇、職業選択の幅の広がり)などが得られるのであれば十分に進路のひとつと成り得ることを示すことができたといえよう。
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