本研究は戦前の中等学校における公民教育がいかなる実態を持っていたか。特に昭和6 年に設置され、昭和18 年にカリキュラム上から姿を消した「公民科」について「修身」との関係を考慮しつつ、その消滅と要因を教育審議会資料等、諸資料から検討した。研究成果は次の2 点である。(1)中央の行政側が大きな変革として考えているこの時期の国家観念の強調に対して、現場では実践的問題との対応というクッションによって受け止めていたこと、(2)戦前の公民教育と戦後の「公民教育構想」との類似性が内容・方法においてみられるという指摘を再確認したこと、である。このことは現在の教育課程改革においても行政側の理念と現場側の受け止め方に一定の差があることを考える必要があることを示唆している。
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