本研究の目的は、ろう学校との連携の下で、聴覚障害幼児・児童の学習環境を豊かにすることを目指して、聴覚障害児教育を対象とした手話リンク教材ソフトの研究・開発を行うことである。今年度は、前年(平成19年度)度の継続として引き続き、教材ソフトの開発研究を行った。昨年度に訪問した北欧での手話教材に関する知見をもと、授業実践との連携と教材開発・研究の協力を得た坂戸ろう学校、沖縄ろう学校の教員からの要望と照らし合わせながら、次の教材ソフト作成開発を進めた。 沖縄ろう学校:小学社会科の教科書に即した手話リンク教材ソフト坂戸ろう学校:幼稚部の児童と保護者と一緒に学べる手話教材ソフト これらの試作ソフトを、沖縄ろう学校では社会科授業で実践を行い、坂戸ろう学校では個別指導及び家庭の中で使用してもらい、評価を得た。その結果、沖縄ろう学校では、地域による手話表現は異なったが、手話つきの社会科ソフトはこれまでなかったため、児童の関心・興味は高く、また、学習内容も把握しやすかったため、児童の学習への意欲向上が見られた。坂戸ろう学校では、教員も保護者もこの教材ソフトを通して、児童との対話の深まりを認識できた。アンケートでは、教材ソフトの内容をより良いものにして早く手にしたいという家族と教員の願いが、教材ソフトの内容についての多くの意見や要望となって表れていた。これらの意見や要望を基に、この教材ソフトを2009年1月に完成し、坂戸ろう学校に在籍するろう児を持つ保護者全員に配布した。2つの教材ソフトの実践結果をろう教育科学会と日本国際聾教育学会・目本聴覚障害教育実践学会に報告した。尚、長野ろう学校では、中学理科の教材作成に向けて打ち合わせを行い、理科教材の具体的なデザインを検討中である。
|