研究概要 |
研究の目的:比や比例の授業の中で,子どもが数学的表記にどのように関わっているのか,その関わりが子どもの比例の考えの変容にどうつながっているのかを考察し,比例の考えを進展させるような数学的表記との関わりを実現することを目指して,指導上の提案を行う。 本年度の実績1:「数学的表記に対する意味を子どもが見直す文脈」についての分析を行った。Van Oersの「記号的活動」(semiotic activity)の視点を取り入れ,「単位量あたりの大きさ」(小6)の授業の中で,観察児童が,数学的表記を「問題にしている」場面を分類,整理した。その結果,大きく4つの場面に分類することができ,また,それらの場面をもとにして児童の振り返りの様子を考察することができた。 本年度の実績2:「単位量あたりの大きさ」及び「比例」に関する数学的表記の扱いについての実態調査を行った。平成19年9月〜10月にかけて,小6・中1の児童・生徒,合計163名を対象にして,アンケート調査を実施した。得られた結果の一部は以下の通りである。 ・ 「単位量あたりの大きさ」を式や絵図で「他者に分かり易く表現する」ことを求めると,それによって方略の変化や推論面での補強が行われる。しかし,その一方で,中学校においても,「分かり易く表現する」ことにはあまり慣れていない様子がうかがえる。 ・ 比例の式(△÷○=4等)の扱いは概ね苦手である(中1)。特に,比例定数「4」等の,2変数間の普遍的(一般的)な関係としての認識が薄い傾向にある。これは,異なる問題(具体的な2量についての問題,表の穴埋めの問題,グラフをよむ問題)において共通に見られた。
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