フランスでは、中等教育の教育課程において「社会・職業生活」科の教育が実施されるなど、普通教育から専門職資格教育までの総合的なキャリア教育政策及び教育実践が行われている。リセ段階の「社会・職業生活」科における職業生活領域の教育内容とその構成の特徴を明らかにするために、1995年以降のバイルー改革後の学習指導要領と教科書の記述内容を分析した結果、次の点が明らかになった。 職業生活領域の教育内容の特徴は、第一に、就業準備段階で必要な「職業教育制度」「求職情報の獲得方法」「労働関連の法律や労働契約」に関する知識からはじまり、実際の職業生活を維持し、職業生活上予想される諸問題を解決したり、リスク防止とリスク管理のために必要な「就業・労働に関する権利と義務」「従業員代表の役割と選出方法」「解雇に関する規則や手続き、失業手当等の退職時の援助」「各種のリスク・労働災害」に関する法学、経営学などの社会科学と、心理学、病理学、人間工学などの総合科学の知識と実用的な情報が中心である。 第二に、これらの教育内容は、学習者が希望する職業に就くためにどのような学校で資格を取得したらよいのか、雇用者との間にどのような契約が必要なのかといった職業生活設計に直接結びつくものだけでなく、自己の生涯発達を見通し、予想される職業生活上の問題解決や、ストレス・マネジメントから失業回避を含むリスク防止、労働組合に参加して労働者の権利と義務を果たすことの意味などを追求し、職業生活の稼働主体としてクリティカルな分析と思考を伴った労働が可能となるように系統立てられている。
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