本研究の目的は、理科を学ぶ意義を実感させることによって学習意欲を喚起し、わかる喜びを体感させることによって学習意欲を継続させ、子どもが主体的かつ意欲的に理科学習に取り組むことができるカリキュラムを開発することである。この目的を達成するために、研究の初年度は、学習意欲の育成に関する先行研究を吟味するとともに、子どもたちが日常生活における理科の有用性をどのように捉えているかを調査した。その結果、理科の有用性に関して、さまざまな視点が存在することが明らかになった。日常生活で役に立っかどうかという実利的・功利的側面のみから、理科の有用性を判断することには問題があることが示唆された。 これらの成果を踏まえて、平成20年度は、実用志向や充実志向といった学習意欲の志向性が子どもの理科学習にどのような影響を及ぼしているかを明らかにするための調査を実施した。また、将来の科学・科学技術を担う子ども達に理科を学ぶ意味や関連性を自覚させることのできる理科カリキュラムを開発するために、ハンズ・オン学習に着目し、その理論と実践ついて検討するとともに日常生活との関連を重視したイギリスの中等理科カリキュラムについても分析した。 その結果、学習意欲の志向性に関する調査から、充実志向性が強いほど知的好奇心と関連した学習内容を学ぼうとする傾向がみられることなどが示唆された。また、イギリスの遺伝教授法に関しては、ヒトの遺伝病と関連づけた遺伝の学習指導が強調されていることなどが明らかにされた。これらの成果は、学習意欲を高める理科カリキュラムの開発にとって有意義なものであった。
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