本研究の目的は、理科を学ぶ意義を実感させることによって学習意欲を喚起し、わかる喜びを体感させることによって学習意欲を継続させ、子どもが主体的かつ意欲的に理科学習に取り組むことができるカリキュラムを開発することである。この目的を達成するために、研究の初年度は、学習意欲の育成に関する先行研究を吟味し、日常生活における理科の有用性をどのように捉えているかを検討した。その結果、理科の有用性に関して、さまざまな視点が存在することが明らかになった。日常生活で役に立つかどうかという実利的・功利的側面のみから、理科の有用性を判断することには問題があることが示唆された。 平成20年度は、実用志向や充実志向といった学習意欲の志向性が子どもの理科学習にどのような影響を及ぼしているかを明らかにするための調査を実施した。また、将来の科学・科学技術を担う子ども達に理科を学ぶ意味や関連性を自覚させることのできる理科カリキュラムを開発するために、ハンズ・オン学習に着目し、その理論と実践ついて検討するとともに日常生活との関連を重視したイギリスの中等理科カリキュラムについても分析した。 これらの成果を踏まえて、平成21年度は、理科で学習したことを日常生活の文脈の中で活用することを意図した教材を開発し、授業実践を通して、開発した教材の有効性を検証した。具体的には、水溶液の性質の学習と洗剤のはたらきとを関連づけることによって、子ども達の学習意欲を喚起するとともに、より深い学びに導くことのできる授業を実践した。また、空気の対流を事例として、体験的な学習を取り入れることによって、子どもが主体的かつ意欲的に取り組むことができる教材も開発し、その有効性を検証した。これらの成果は、学習意欲を高める理科カリキュラムの開発にとって有意義なものであった。
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