研究概要 |
(1)日本の基層文化に関する先行研究の学際的整理として,ルース・ベネディクト,加藤周一,中根千枝,土居健郎,青木保,内山節,芳賀綏,佐々木高明,大林太良らの議論を通覧し,その論点を(1)自然との調和,(2)他律性,(3)言外の理解,(4)精神修養,(5)余韻の愛好の5点とし,全体に通底する基層文化概念を内山節の思索を参考に,複合性と多相性と定位した。この概念については,新学習指導要領で重視しているわが国の伝統と文化の内実を解明する上で一つの方向性を示すものとして,学習指導要領の改善協力者会議の席上で説明した。 (2)古典文学教材における日本の基層文化概念の分析研究として,古典作品に登場する動物の象徴性,『伊勢物語』における表現分析,教科書古典教材分析などを行った。これらは教育関係の雑誌や講演会で報告され,新学習指導要領で指導事項に取り立てられた「伝統的な言語文化」へのアプローチを展望する上での指針となるものである。 (3)国語科教材における日本の基層文化概念の調査研究として,小学校の現行国語教材にみられる語彙の悉皆調査を行った。取り上げた語彙は季節感を示すものである。言語文化に注目した現行国語教科書の悉皆調査としては初めての取り組みであり,国語教材に記された季節関連語彙の分析を通して,日本人の生活感,色彩に対する感受性,素材とされる動植物の特徴などを考察した。考察の成果は国語教育研究会で発表した。
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