研究課題
本研究の目的は、小・中・高等学校における幾何教育について、児童・生徒の「数学的推論能力」の発達の様相と、その育成を重視した指導系統を理論的・実証的に明らかにするとともに、「数学的推論能力」の育成を重視した幾何教育を実現するための具体的方策に関して提言を行うことである。平成21年度は、主に以下の2点に関して検討した。(1)小中高等学校での図形に関する指導系統を踏まえて、これまでに本研究が行った、小学校第1学年での「立体」「色板並べ」、第3学年での「はこの形」、第4学年での「円と球」、第5学年での「三角形の角の和」、中学校第3学年での「三平方の定理の利用」、高等学校第1学年での「チェバの定理」に関する実験授業に基づいて、これらの内容に関する小・中・高校生の「数学的推論」の様相の特徴についてまとめた。例えば「三角形の角の和」の学習については、小学校5年生と中学校2年生でほぼ同様の指導が行われているのは興味深い。(2)日本の論証幾何の学習指導に関する成果について外国の研究者からの意見を広く求めるために、国際学会で積極的に発表する機会を持った。論証を中心にして幾何教育を進めている国は少ないが、日本の中学校数学科における生徒の積極的な活動の様子に強い関心をもっていること、そしてまた、図形の論証の理解に大きな影響を与える文字式による論証については、(文字使用以前の)命題が真であるかを数で確かめる段階での子どもの理解に強い関心があることが、議論を通して明らかになったとともに、日本の幾何教育の方向についての示唆が得られた。
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中学校新数学科の授業創り (1) 豊かな数学の授業を創る(明治図書出版)
ページ: 53-60, 134-143