本研究の目的は、子ども同士の対話の促進によって、もめごと問題を子どもたちで解決できる力を育成するプログラムを開発し、メディエーション教育の可能性を拓くことにある。 本研究分野は、教育分野においては今後に期待される分野といってよい。子どもたちがもめごと問題を解決する力を身に付け、社会正義の実現のためにスキルを獲得しておくことは極めて重要である。 そこで19年度は、ピア・メディエーション研究が比較的進んでいる米国やカナダ、英国における文献を参考にしつつ、英国の小・中等学校における取り組み調査を行った。また、実践研究としては、文化的適合度の高い実践とするためにもめごと解決スキルの獲得を企図したプログラムを策定し、A小学校4年生B学級児童全員に施行的に導入しその効果について多層ベースライン法にて検討した。 その結果、(1)英国における調査から集団の成員性と社会正義の育成を図っていくためには、学級全員の子どもたちに英国で行われているようなシティズン・シップ教育の導入が不可欠であることが示唆された。(2)実践研究においては、もめごと解決スキルの獲得及びそのスキルの般化と維持が図られ、また、学校生活において同級生や下級生に対して自発的にピア・メディエーションを行うなどの向社会的行動がみられるようになった。 20年度は、英国の教育課程に位置づけられている「シティズンシップ」を参考に、わが国の教育課程に導入可能な小学校高学年及び教師用のプログラム開発を行っていきたい。
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