本年度は、「音楽科教育における日本音楽の位置づけの歴史的検討」2年目にあたる。まず、昨年度開姶した1985年収集の音楽および資料の整理について、本格的にデジタル化の作業に入った。カセットテープに収録されているものとLPレコードに収録されているものを、デジタルデータとしてSound it!およびSound Forge Audio Studioのソフトを使用してハードディスクに取り込み、一部についてはSUGI Speech Analyzerで、ピッチ解析を行った。時代やジャンル別の比較を行うためには、それぞれのデータの信頼性を高める必要があるため、今後、比較に適した音源をさらに調査して、これまで耳による採譜で行ってきた比較譜での検討に実証的なデータを加えた検討を可能にしていきたい。 他方で、兼常清佐の復刻文献を入手し、これまで遺作集を中心に断片的に考察してきた彼の理論的枠組みの考察を継続している。明治・大正・昭和という時代において、唱歌教育と並行して進んだ洋楽受容をその時代の言葉で捉えた考察となるように、高野辰之、坊田かずま、藤井清水らとの関係をさらに追求していきたい。 加えて、現代における日本音楽の教材化のあり方について、民俗学の視点を手がかりとして学習材としての日本伝統音楽の意味を問うとともに、経験と学習材の関わりを箏を学習材とした3本の実践的研究に関与した。現代という時代を相対化して捉えつつ、明治以前から存在している音楽を学習材として今後いかに位置づけていくのか引き続き検討を行う。
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