昭和26年版小学校社会科学習指導要領の編集に携わった上田薫、長坂端午、大野連太郎らの社会科教育論が、同学習指導要領にどのように反映されたのか。そして、連合国軍総司令部民間情報教育局(GRQ/CIE)教育課の担当係官であったエヴァーツの教育観が、同学習指導要領にどのように反映されたのか。昭和26年版小学校社会科学習指導要領の分析的検討は数多くなされてきているが、編集過程とカリキュラム構造の分析的検討を踏まえた特質の性格の抽出は未開拓の分野である。 4年間の研究期間の第2年度に当たる平成20年度は、上田、長坂、大野らが当時(昭和22年から30年にかけて)執筆した論文の検索と収集を昨年度からの継続課題とした。そして、国立国会図書館、名古屋大学付属図書館、筑波大学付属図書館等で調査を行った結果、これまでに合わせて250点を超える論文や関係資料を収集することができた。 それとともに、平成20年度は、昭和26年版小学校学習指導要領の編集過程を解明すべく、CIE教育課の「会議記録」の収集に力を入れた。昭和25年から昭和26年にかけてのエヴァーツと長坂・上田・大野らとの「会議記録」を検索・収集・翻訳する中で、日本側の編集担当者の回顧から導かれてきた昭和26年版小学校学習指導要領の性格とは異なる側面も明らかになりつつある。その一方で、「会議記録」が欠落している期間もあり、確認作業を進めていく必要がある。 来年度は、本年度までの成果を基盤として、長坂ら日本側編集担当者の回顧録とCIE教育課の「会議記録」の対比的検討を進め、昭和26年版小学校社会科学習指導要領の編集過程とカリキュラム構造の解明を進めていきたい。
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