昭和26年版小学校社会科学習指導要領の編集に携わった上田薫、長坂端午、大野連太郎らの社会科教育論が、同学習指導要領にどのように反映されたのか。そして、連合国軍総司令部民間情報教育局(GHQ/CIE)教育課の担当係官であったエヴァーツの教育観が同学習指導要領にどのように反映されたのか。昭和26年版小学校社会科学習指導要領の分析的検討は数多くなされてきているが、編集過程とカリキュラム構造の分析的検討を踏まえた特質と性格の抽出は未開拓の分野である。 4年間の研究期間の第3年度に当たる平成21年度は、昭和26年版小学校学習指導要領の編集過程を解明すべく、特に、CIE教育課の会議記録や週間記録の収集に力を入れた。第3年度の初めに直面していた課題は、昭和25年3~9月の会議記録は収集できているが、9~12月分が欠落していたことである。会議そのものが開催されなかったのか。会議記録の欠落なのか。そこで、平成21年度はCIE教育課の会議記録と週間記録の徹底的な検索を行った。その結果として見出された記録はわずかであるが、昭和26年版小学校社会科学習指導要領の編集過程とその特色が明らかになりつつある。 本研究の最終年度に当たる平成22年度は、本年度までの成果を基盤として、長坂ら日本側編集担当者の回顧録とCIE教育課の会議記録の対比的検討を進め、昭和26年版小学校社会科学習指導要領の編集過程とカリキュラム構造の解明を進めていきたい。
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