日本音楽の雅楽を中心に、音階に用いられる音律の理論的検討を行なった。 雅楽の音律は、中国の三分損益に基づくが、三分損益法は純正完全5度・完全4度を組み合わせる方法であり、古代ギリシャのピタゴラス音律と同じ考え方と方法によっている。一方西洋音楽は17世紀以後、和声法と長短調組織を基礎に構築され、調の根幹を成す三和音が協和的に響く音律を用い、近代では平均律が使われている。学校教育音楽への日本音楽の導入は、それ自体望ましいことであるが、西洋の楽器であり、平均律で調律されたピアノで日本の音楽を演奏する場面も、多々見られる。平均律で奏し、歌われる日本の音楽は、旋律の本来の表現力が弱まり、印象が変化してしまう。これは、日本の音楽が基本的に大全音を使用していることによる。この点について、(1)問題点を整理し、(2)音律と旋律的表現力の関連を考察し、(3)三分損益法と平均律のピッチの差を算出した。 また、三分損益法では、純正完全5度・完全4度を反復して音律を決定してゆくが、その方法を導入した日本の順八逆六法では、音律形成の途中、音を1オクターブ上げ、その後また音律を継続する手法を取る。しかし、ピタゴラス音律、三分損益法ともに純正完全8度とは相容れない(ピタゴラス・コンマの発生)。この点の調整について考察を継続中である。 研究成果として、謡実践がある(草紙洗小町 金剛会館 2007年5月 他)
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