本年度は、研究の最終年度として、これまで収集した北米のハイク界および教育界における文献調査や、北米で実際に行ったハイクの実験授業の分析を通して、本研究課題に関する考察・まとめを中心に研究活動を行った。まず、昨年度行ったハイクの実験授業の分析によって、短詩に対する学習者の感性には言語や文化を超えて共通するものがありそれは国を超えて共有することが可能であること、すなわち、俳句・ハイクの文芸性に依拠した国際交流の可能性が確認された。さらに、ハイクによる国際交流を具体化する上においては、学校の教員がハイクの教材価値を実感すること、翻訳のあり方を工夫することが重要であることも確認された。次に、文献調査によって、ハイク界においてハイクの本質や形式(定型と季語)に関する議論が長い間重ねられていること、ハイク界は、五七五の定型と季語を持たなければならないとする保守派、それらにそれほどこだわらない中間派、さらにそれらを否定し自由律ハイクを主張する急進派の三つに大きく捉えることができること、ハイク界の歴史は、ハイクの客観性・主観性・写実性などの点から四つの大きな世代に分けられることなどが確認された。さらに、学校教育においてハイクは詩教育の一環として取り扱われていること、その紹介は「十七シラブル(五七五)の三行で書かれ、しばしば自然を題材としているとても短い日本詩のスタイル」というものがもっとも多いこと、授業の形態は、鑑賞を軸としたものが多い我が国とは異なり、創作を軸としたものが多いことなどが明らかになった。
|