20年度は、「中1ギャップ」を中心に研究をすすめた。小中の算数・数学カリキュラムを考えるとき、小学校はともかく中学校の「学校文化」や教員の「授業観」「子ども観」は問題が大きい。「中学生の成長・発達はジグザグ・デコボコの過程である」ことを前提として、中学校の授業や指導は展開されなければならない。 研究の成果は、認知科学や教育社会学の研究者による「中1ギャップ」研究から学んだことである。授業構成ひとつとってみても、小学校(構成主義)と中学校(詰め込み中心の中途半端な「教科主義」)は、容易につながらない。佐賀では「4-2-3制」と品川や呉が取り組んだ「4-3-2制」の両方が動いている。小中の連携を模索する各地域の課題や事情は異なる。市町教育行政はここに目が向かず、旧来型の「学力向上」に躍起である。 今年度は、科研研究の最終年度である。小中の接続のマスターキーは、「中学校の授業改革」である。「受験と部活動」が顕在である中学校の改革は容易ではない。受験学力=真の学力、部活動=生活指導という信念は揺るぎない。地方行政も校長会も、「中央に追いつけ」「どこの県に学べ」というかけ声ばかりで、地域や学校が抱える事情や課題を見ようとはしない。小学校と中学校の「学校文化」の違いから切り込むことは難題だが、ここに切り込みたい。そもそも、戦後の教育改革の中で「どれだけ、9年間の義務教育」について議論されたのだろうか?「義務教育=市民を育てる教育」という発想がどれだけ地域に根付いているか?算数・数学の世界で言えば、「分数の教育」をどのように考えてきたのか?問題は山積みである。20年度は「中学校で分数を扱うとしたら…」という課題を立て、附属中学校で試行授業を試み、21年度に出版される教育誌に特集を組んでもらった。
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