研究概要 |
本研究は,一言で言えば,「美術文化のアイデンティティ」の模索過程で形成されてきている美術文化環境と,美術教育指導や教育内容・方法とを,いかに連関し合わせることによって,子どもたちが,自らのアイデンティティを主体的に形成しつつ,それを体現する独自の表現を実現していけるように保障するかという問題に取り組もうとするものである。 この問題の解明のために,日本の農業共同組合(JA)の公益団体(社)光の家協会が,世界各国との交流・国際理解の促進の一環として毎年行い,15回目を数えるコンテストと協力して,作品分析から研究課題の解答の糸口を得ようとすることから取りかかっている。さしあたり,昨年2007年8月9日・10日開催の「日本美術教育学会学術研究大会・東京大会」で行った「世界の子ども図画コンテスト」で展示される約180点の作品と,その審査過程でコンテストから除外された作品とを合わせた,世界約60カ国の6歳から15歳の子どもたちの5万点の作品の分析に取り組んだ。 しかし,このような研究体系に基づいた,5万点を越えるこれら世界の子どもたちは,長期間借り出すことはできないので,各国から100点ずつを選び,デジタルカメラで全作品を撮影した上で,これまで作品分析を行うことにした。それは,各国ごとに年齢・男女・テーマと表現内容別に分類した後,テーマと表現内容に適った表現方法がいかに追究されているか,その達成度,疑問点・問題点,課題などについて抽出し,それぞれの特徴を比較対照できるような表にまとめ,そのまとめから今後の研究を推し進めるに当たって必要な要件を割り出すという過程で進めてきた。現在,2007年8月9日と10日に開催の「日本美術教育学会学術研究大会・東京大会」で論議や研究の課題を提起したことを契機として,これ以後の研究方向を検討しているところである。
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