研究概要 |
本年度は計画に従い,以下のことをおこなった. 研究協力幼稚園において4月より1年間,夏期ワークショップを含むアート教育のカリキュラムを策定し,年長児3クラス,約90人を主たる対象として実行した. 理論面では特にカリキュラムの生産的な実施に必要な保育者の側の学習の構造について解明した. カリキュラムの具体的な計画に関しては,平成17-18年度科研費研究の成果を受け継ぎつつ,年間テーマを「地球・土・宇宙」とした.夏期ワークショップの招待アーティストは計画通り彫刻家・東京芸術大学准教授の林武史氏に依頼した.氏は4回計7目幼稚園を訪問し,夏期ワークショップでは子どもたちとともに「泥の山」を園庭に制作した. 研究者は計15回幼稚園において観察,ビデオデータ取得をおこなった.特に夏期ワークショップでの林氏と幼稚園児の協働的な制作過程については研究補助員を用いて複数のビデオデータを取得した.また11/12月には,林氏とのインタビューをおこない,林氏のワークショップ経験についてのデータを取得した.さらに保育者の経験についてのデータとして,保育者個人によるクラスの保育の展開についての記録をデータを予備的に取得した. 本年度の理論的考察である保育者の学習の重要性については2007年7月にカナダ・ヴァンクーバーでおこなわれた「想像と教育に関する第2回研究シンポジウム」において発表した.また2008年1月に出版された「視点」(東大出版会)は以前出版された同著の新装版であるが,その中に新しく追加された解題において,本年度の理論的考察が発表された.また2007年9月の日本教育心理学会第49回大会の学会研究委員会企画シンポジウム「アート教育の可能性を拓く」での報告で,また2008年3月の日本発達心理学会第19回大会での自主シンポジウム「保育におけるアートの可能性を探る」で本研究の成果を発表した.
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