平成21年度は、以下の研究を行った。 1.研究協力者である児玉、加藤が聴覚的な問題を抱えている事例(22名)に対しておこなったAP音響心理検査(試作版)の適用結果についての検討をおこなった。その結果、発達障害とされている児の中で聞こえに困難さを持つ児の多くに聴覚情報処理検査において異常が認められ、聴覚情報処理という側面からのアプローチが有効であった(児玉・加藤・小渕・原島)。 2.聴覚処理検査用音声の発話サンプルにおいて、両耳分離聴検査等の音声素材として適正なラウドネスバランスを調整するための方法論的検討をおこなった。その結果、適正なラウドネスバランスを決定するためにRMS値を利用することの有効性が示唆された(原島・小渕)。 3.研究協力者である八田および研究代表者である原島、連携研究者である小渕が、聴覚処理評価法の一つであるGap検査用プログラムとして、被検査児の能力に応じて検査の難易度が自動的に調整されるup-down法による適応型検査プログラムについて、被検児の集中力を考慮し、短時間で終えることのできるように改良を加えた。その結果、従来に比べ、短時間でしかも疲労が少ない検査方法に改善することができた(八田・原島・小渕)。 4.電気生理学的聴覚処理検査として聴性中間潜時反応および事象関連電位P300を聴覚的問題をもつ成人に対しておこない、注意、覚醒水準、記憶と聴覚処理の関係について検討した。その結果、P300においては、対象の注意、覚醒水準、記憶能力が聴覚処理に影響を及ぼすことが示唆され、これらの心理学的検査結果との突き合わせの重要性が明らかとなった(原島・小渕)。
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