研究概要 |
本研究は,知的障害者の一般就労が進まない現状に対し,附属特別支援学校高等部での現場実習を大学の資源を活用して進めていくことで,より効果的な知的障害者の移行支援のあり方について実践的に提案していくことを目的として進めてきた。最終年度にあたる本年度は,これまでの成果を実践場面で検証すべく,聴覚障害を併せ持つ知的障害の生徒1名のケースについて,附属学校教員,大学教員,食堂責任者間での連携のもと,大学内の食堂において以下のように現場実習を実施した。 大学教員と高等部教員とで,現場実習プロフィールを協同的に作成した。職業適性検査を活用することで,これまでの行動観察のみを手がかりとしていた記述内容の見直しを行い,暖昧にとらえていた実態をより詳細にとらえることができた。 現場実習においては,手話のスキルを有する学生ジョブコーチを配置した。大学内での実習であることの利点を活かすことで,実習期間内での日々の細かな情報共有の中で,本人への作業の指示の工夫や職場の同僚職員へのコミュニケーション方法などについて提案を行うことができた。 月1回のミーティングでは,1)それぞれ障害児者の教育,心理,医学,福祉を専門とする4名の大学教員,2)附属特別支援学校教員,3)学内の2ヵ所の食堂の責任者(専務およびチーフ),4)学生ジョブコーチ,5)その他県内の有識者が集まることで,多角的な視点から事例検討を行った。 以上の成果として,大学の人的・物的資源を活用することが,一般就労にはいま一歩支援が必要な知的障害生徒が職場適応能力を身につけるために有効な機会を提供することになり得る可能性が示唆された。 また,平成12年度以降の就労支援に関する一連の研究成果を包含した報告書を作成した。
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