本研究は、作文や日記などの聴覚障害児が産出した文の分析を通じて、文法や語彙の習得における発達的特徴を明らかにし、その知見に基づいて聴覚障害児の日本語発達評価法を開発することを目的としている。本年度は、聴覚障害児の書いた文章データの収集及び電子データ化を行うとともに、形態素解析ソフトウェアを用いて動詞を中心とした使用語彙の特徴について分析した。収集した文章データ数は約900編であり、すべての電子データ化を完了した上で、(1)聴覚障害一事例が書いた約300編の文章データを対象に動詞使用を縦断的に検討し、児童期における動詞産出の発達的特徴について明らかにした。(2)また、聾学校に在籍する小学部1年生から専攻科2年生までの文章約200編を対象に、動詞および助詞使用の発達的変化や誤りの特徴等を横断的に分析した。(3)さらに、従来から聾学校で使用されている語彙表を集約し、聾学校に在籍する聴覚障害幼児31名を対象に、動詞・形容詞・副詞約500語を用いてチェックリスト法による語彙習得に関する実態調査を行い、幼児期の手話や音声による語彙習得について、その発達的傾向を明らかにした。 (1)については、その研究成果を日本特殊教育学会45回大会および論文として公表した。(2)および(3)については、次年度の学会にて発表を行うとともに、論文として公表する予定である。
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