本研究は、作文や日記などの聴覚障害児が産出した文の分析を通じて、文法や語彙の習得における発達的特徴を明らかにし、その知見に基づいて聴覚障害児の日本語発達評価法を開発することを目的としている。本年度は、前年度に行った聴覚障害児の書いた文章における動詞使用の発達的特徴に関する分析結果、および聴覚障害幼児を対象に実施した動詞・形容詞・副詞の語彙習得に関する実態調査の結果を論文として公表した。また(1)聴覚障害一事例が書いた約300編の文章データを対象に形容詞使用を縦断的に検討し、児童期における形容詞産出の発達的特徴について明らかにするとともに、(2)聾学校に在籍する小学部1年生から専攻科2年生までの文章約200編を対象に、形容詞使用の発達的変化や誤りの特徴等を横断的に分析した。これらの研究から、聴覚障害児の形容詞の用法に関する特徴や困難が明らかとなり、聾学校等での日本語力評価や指導において重視すべき観点が明らかとなった。加えて(3)聾学校小学部・中学部の作文における接続表現の使用の特徴、および格助詞の使用や誤用の特徴について、言語学的な観点から予備的な分析を行った。(1)については、その研究成果を日本特殊教育学会46回大会にて発表し、(2)については学会研究雑誌(査読有)に論文として掲載される予定である。(3)については、本年度に分析等を完了し、平成21年度の学会にて発表を行うとともに論文として公表する予定である。
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