1)平成21年度には、全国聾学校を対象に実施したアンケート結果を基に聴覚障害標準群を抽出し、聴覚障害児版のスクリーニング基準の提案を行った。その結果、全国聾学校の中に約20%の発達障害様の困難のある児童生徒がいることが示された。 2)聴覚障害児版スクリーニング基準の妥当性を検討するために都下の聾学校小学部で悉皆調査を行った。その結果、発達障害の有無に関する教員の印象と聴覚障害児版評価基準の一致率は86%と高率で、また一致しなかった事例に関しても、一致しなかった理由(症候群等)を説明できた。このことから、聴覚障害児版基準は概ね妥当性であることが示された。 3)発達障害のある聴覚障害児13名に対して、年間20回の継続指導を行い、クラスター分析により抽出された典型事例(3事例)について困難と、支援方法の観点から検証をおこなった。ディスレクシア様の困難を持つ事例に対しては、文字を連続提示することで早期に音声化する指導プログラムを実施した。その結果、支援のない状態でも8割以上の文節で円滑に音読できるようになった。また、流暢に文章を読めることで、読解力の向上も見られた。対人関係や注意に課題を持つ事例の場合に、アニメーションを利用することで状況の理解や注意の時速が促されることが示された。 4)日本特殊教育学会(宇都宮)で「発達障害のある聴覚障害児の実態と支援」をテーマに自主シンポジウムを開催した。 5)APCD2009(第10回アジア太平洋聴覚障害問題会議:バンコク)で、上記の成果を報告した。
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