研究概要 |
本研究は,インクルーシブな学習環境(通常学級や難聴学級に在籍)下での聴覚障害児童に対して学習支援を行うための包括的なアセスメント方法の開発を行うものである。具体的には,聴覚障害児童の言語や学習面を中心とした特別なニーズのアセスメントを行うための包括的なチェックリストの作成,教育現揚での試用とその結果に基づく個別支援計画作成への援助,さらに計画に基づく指導の実施と再評価を通して聴覚障害児童への学習支援の評価のあり方の検討を行うものである。平成20年度は,平成19年に引き続き,センター校方式の小学校難聴学級を中心に訪問し,授業の参与観察を行った。また比較対象のため,ろう学校小学部も訪問し,学級の参与観察を行った。また本人及び担当教師に学習状況の評価方法に関して面接を行った。本人への学習支援のためのアセスメントの資料としてK-ABC検査を実施した。その際,手話による検査の実施方法について検討した。127名の聴覚障害児童について検査資料を得た。下位検査や認知過程の優位さなど,聴覚障害児童に特徴的な傾向を定量的に分析し,整理した。同時処理優位の児童が多いこと,認知下位検査では「数唱」「語の配列」の得点が低いこと,習得度が認知処理得点と比べ,低いグループには同時処理優位の児童が多く含まれていた。また個々の児童の結果については,担当教諭にフィードバックし,指導計画の立案や内容の検討に助言を行った。
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