研究概要 |
本研究は,聴覚障害児童に対する学習支援のためのアセスメント方法について検討するために,K-ABC検査の手話による翻訳を行い,実施方法について検討を行った。さらに,聴覚障害児童151名(聾学校在籍115名,難聴学級在籍36名)に検査を実施し,結果の特徴の分析を行った。聴覚障害児童の検査結果の全般的な傾向として,同時処理過程が優位であった。また認知処理過程の得点よりも習得度の得点が有意に低かった。下位検査では,特に,「数唱」と「語の配列」に落ち込みが見られた。また習得度では,「なぞなぞ」が低かった。これらの特徴は,被検児の聴力レベルとは無関連であった。また聾学校在籍児童と難聴学級在籍児童の間にも差はなかった。下位検査を因子分析した結果,2因子が抽出された。継次処理と習得度の下位検査が1つの因子に負荷が高く,標準化サンプルの3因子構造とは異なっていた。さらに認知特性と習得度の関係を検討した。まず対象児童をバランス型,同時処理優位,継次処理優位の3つに分類し,さらに認知処理得点と習得度得点の差の有無によって2つのグループに分けた。対象児童の数では,バランス型が最も多く,ついで同時処理優位と分類される児童が多かった。一方継起処理優位の児童はわずかであった。習得度との関わりでは,認知処理得点より有意に低い値を示した対象児童が同時処理優位のグループに最も多く含まれていた。これらの結果をもとに,インクルーシブな学習環境下での学習支援に関して,考察を行った。
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