今年度は中学生のディスレクシア児と健常児、および成人を対象とする調査を行った。 (1)成入を対象とする日本語・英語の読みと音韻認識能力評価 日本語における読み書き障害の既往のない健常成入18名(男7名:女11名、平均38.5歳)、英語の読み困難を主訴とするディスレクシア疑い例1名を対象として検査を行った。小児用に作成された読字障害診断検査を用いて日本語の読み能力を評価した。ディスレクシア疑い例では健常群に比べ仮名単音連続読み、単語の音読時間が有意に長く、成人では音読速度が読字困難の有用な指標となると考えられた。また、音韻認識課題(母音比較)の成績は単音連続読みの音読速度と強い相関を示し、成人においても音韻認識能力が仮名のデコーディング能力と関連していることが明らかになった。一方、英語圏での標準検査から作成した英語能力検査の各項目は音韻認識課題成績と有意な関連を認めず、音韻認識能力が第二言語としての英語の読字能力の決定的要因ではないことが示唆された。 (2)中学生のディスレクシア児および健常児を対象とする日本語・英語の読みと音韻認識能力評価 中学校に進学したディスレクシア児が少なく十分な数の検査が行えなかったため、個別の聞き取り調査を行い、ディスレクシア児に特徴的な困難を抽出するためのアンケートを作成した。このアンケートを用いて、来年度に規模を拡大して調査を行う予定である。
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