研究期間の3年間で、専攻科を設置する私立養護学校7校(三愛学舍、いすみ、若葉、旭出、聖坂、聖母の家学園、光の村土佐自然学園)、国立養護学校1校(鳥取大学附属)、私立高校1校(鹿児島城西)、その他3校園の計12か所を訪問調査した。調査成果を踏まえて、まとめの年度となる平成21年度は、第1に、2回目となる「研究フォーラム」を開催した(平成21年8月21~23日、鳥取市)。平成19年度に開催した1回目のフォーラムでは各校園の沿革・教育課程を中心に交流したが、今回のフォーラムでは「二重の移行支援」に焦点をあてて各校園の取り組みを交流した。その成果は、「研究フォーラム」の報告冊子としてまとめているが、専攻科を経由することでより主体的な社会参加がみられる、仮に離転職をしても自らを総括して再出発する力がみとめられる等と報告された。第2に、研究成果をまとめて、単著『障がい青年の自分づくり青年期教育と二重の移行支援』(日本標準、2010年11月発刊、194頁)を出版した。鳥取大学附属特別支援学校の高等部専攻科(愛称「附養カレッジ」)の開設経緯、教育課程の特色、設置後4年に及ぶ「自分づくり」の実践例をまとめるとともに、全国の12校園の試みを概説した。本書では特に、故・宮原誠一が提起した「青年期教育学」の構想を障害青年の実践に敷衍するとともに、「子どもから大人へ」「学校から社会へ」という二重の移行支援をOECDのトランジション研究の成果も踏まえで展開しだ。第3に、学会発表等を精力的に行った(計4件)。特に、日本教育学会での発表「中等後教育としての専攻科教育-障害青年の青年期教育と移行支援-」(平成21年8月29日、東京大学)では、「中等後教育」という従来の概念を、(1)高校等の専攻科を含める、(2)発達障害者など特別ニーズのある者を含めるという2点を加味して再定義すべきことを提起した。
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