研究概要 |
平成21年度は,IEPのサービス・コーディネートの構造分析と日本の自閉症児教育との比較を行った。IEPによる提供サービス決定のため,各学校(学校区作成)が使用しているIEPマニュアル自体は,特に変化していなかった。IEPをもっ児童生徒からみた場合,これまでSpecial Classで提供を受けていた特別なサービスの「場所」がLearning Centerに変更になっただけである。IEPのサービス提供は,元々,サービス提供を行う場所に関する規定は存在しない。一方,Learning Centerにサービス提供を行っているNPO・POはどこも「reading」「writing」を新しい提供プログラムとして加えていた。NCLBの実施によるLeaning Centerのプログラムは,学校区が一括して1つのNPO・POと契約しているものが多くなっており(以前は,ロサンゼルス学校区内で1つだけ),そのためである。興味深いのは,その新しいプログラムへのIEPのもつ自閉症児や発達障害児の参加が増加していることである。財政難であるカリフォルニア州は,NCLBの実現のため,これまでIEPをもつ児童生徒個別の契約であったものを一括契約(ある金額の中でその学校でサービスを必要とする全ての児童生徒に提供する契約)とし,全体的な財政支出を増やさないで,Leaming Centerを運営していた。そのためNPO・PO側は学校区と契約を結ぶため,新しいプログラムを設定せざるを得なくなっていた。日本の自閉症・発達障害教育は,学習指導要領の改訂があり,ソーシャル・スキルを中心とした対人関係のプログラムが増加している。その一方で,Learning Centerでは,academicなプログラムの実施が中心であり,POの中には,応用行動分析・PASS理論に基づく系統的で効果的な「reading」「writing」のプログラムをもっているところも出現していた。日本の場合,小5・中2で実施する学力テストへの障害児の参加は,明確に定義されていないが,この結果を学校評価として使用するようであれば,カリフォルニアのNPO・POの新しいプログラムは導入の参考になるかもしれない。
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