研究概要 |
1.虐待対応フローチャートの精緻化〔研究1〕保育者による児童虐待対応の連携段階における親対応プロセスの意思決定モデルを面接調査および探索的因子分析により検討。親対応プロセスは,「対話行動(α=.83)」「協力要請(.84)」「進行管理(.78)」「受容的態度(.67)」「日頃からの防止策(.85)」「日頃からの個別関係形成(.80)」の6因子から構成され,「対話行動」と「協力要請」プロセスに対応上の問題が生じることが確認された。2.診断・評価尺度の妥当性・信頼性の検証〔研究2〕保育者用児童虐待防止活動自己効力感尺度(改訂版44項目)の信頼性と妥当性を,保育士369名(配布1,000名)を対象に検証した。信頼性係数は.86~.97,通告率との関連(r=.17,p<.05)が有意であり,場面提示法より,この効力感(改訂版)が虐待判断(β=.10,p<.05),報告(.25,p<.01),管理者への働きかけ(.26,p<.01),単独通告(.19,p<.05)を有意に予測することが認められ,信頼性,妥当性ともに確認された。この効力感の源泉は,虐待防止に対する不安の呼応性不安(β=-.28,p<.001)や予期不安(-.15,p<.01)が低いこと,虐待防止体制の認知(.23,p<.001)が高いことだった。〔研究3〕親と保育者との関係性に関して,データを追加(保護者合計213名)し再分析した。コンジョイント分析の結果,保育士への援助要請(信頼)は,「子どもの保育」43.79%,「子どもからの評価」30.03%により説明され,この傾向は保育所や育児不安の程度に関係ないことが示された。3.包括プログラムの最適化を図るための実証的研究〔研究4〕虐待対応包括プログラム(80分×14回)効果の検証を保育志望学生4年生(n=105)と短大2年生(n=107)を対象に実施した。事前から事後にかけて児童虐待防止活動自己効力感(改訂版)の下位尺度すべてに有意な肯定的変化が認められた。また不安尺度においても予期不安が低下する効果が認められた。この効果をもたらした要因は親子ケアの理解到達度だった(大学:β=.18,p<.10,短大:β=.23,p<01)。
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