研究概要 |
科研費採択課題最終年度である今年度は、海外の学会にて研究成果発表を行った。平成19年度および20年度における日米間の調査実験の結果、従来の研究結果と同様、両文化群で、若年者は表面的意味想起において、高齢者は解釈的意味想起において、それぞれ高い遂行成績を示した。しかしながら、以下の3点について新たな結果が示された。 1.日米両国の高齢者は、それぞれ異なった文化の物語テキスト条件下において、その文化に属する群よりも深く、統合的な解釈をしていた(Hosokawa,2009)。 2.米国人群において、東洋の意味を含有する物語テキスト条件下では、高齢者は異なった文化のテキストが刺激として提示されると、より深く統合的な解釈をした。 3.米国の高齢者群の表面的意味想起成績は高い傾向にあった。 これらの結果を考察すると、高齢者は異なった文化の物語テキストが刺激として提示されると、より深く、統合的な解釈をする。それは馴染みのない刺激に接近するため、豊富な人生経験によって培われた知識とWisdomを適応させながら物語の要旨を解釈することに効果的に焦点を当てるためであると考えられる。また、これまでの先行研究においては、高齢者は解釈的意味想起において高い成績を示す一方で、表面的意味想起においてはあらゆる条件下で差異は認められず低い成績を示した。しかしながら、異なる文化的意味の物語を提示された米国人の高齢者群の表面的意味想起成績は高い傾向を示した.この結果は、豊富な人生経験によって培われた知識とWisdomにより深い解釈的意味想起をすることにより、表面的意味想起が促されたと考えられた。従って、これまでは高齢者にとって困難であった命題想起としての表面的意味想起成績が向上する可能性があることから、表面的意味想起そのものと表面的意味想起と解釈的意味想起の関係性について明らかにすることが今後の課題として示唆された。
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