研究概要 |
本研究は、近年動物を対象とした古典的条件づけ分野で発見された、申請者自身によるものを含む最新の知見、特に、刺激競合という一連の現象に関する知見が、随伴性判断や因果推論などヒトの関係性学習場面にどの程度応用可能かを実験的に検証することを通じ、過去の研究において明らかとなった古典的条件づけのような基本的学習過程とヒトの関係性学習の連続性について,さらに検討を加えるものである.21年度は、過去二年間で整えた研究環境にて,これまでに動物の古典的条件づけ場面において発見されてきたいくつかの現象の追試を幅広く試みたところ,超学習や,相対的刺激妥当性からの回復など,いくつかの現象は人の連合学習場面では非常に観察され難いことが明らかになった.これらの成果については,22年度に開催される国際比較心理学会,オーストラリア学習学会にて発表する予定である.また、もうひとつの研究計画の柱である,刺激競合と刺激の持つ情動性の関係については,用いる刺激の持つ情動価の測定の困難さ,明確に情動価を伴った刺激を利用することに伴う倫理的問題など,いくつかの困難を克服するために時間がかかり,パイロット的な実験を行うに留まったため,実験データとしての明確な成果は残念ながら得られなかったが,一方で,このテーマについてのさらに踏み込んだ理論的考察を行い,行動科学学会において発表した.この内容は今後,同学会のもつ査読誌である「行動科学」において論文として掲載される予定である.
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