研究概要 |
ダイナミカル・ヤン・バクスター写像に付随した双亜代数(bialgebroid)に関する前年度の研究成果を発表しようと準備しているどき, 研究代表者は, その証明に圏論的な概念が極めて重要な役割を果たしていることに気付いた. 本年度は, 主として, この新たな視点から前年度の研究成果を捉え直した. 結果として, 前年度の研究成果をより拡張することに成功した. 当該年度に実施した研究の成果は以下の通りである. 1. 前年度に導入した(H, X)-双亜代数という概念を一般化するため, 前テンソル圏(pre-tensor category)という概念を新たに導入した. 2. 双亜代数は, ある性質を持つ代数のなす圏で特定の性質を持つ対象objectとしてれる. これに対応する前テンソル圏での対象として, 圏論的双亜代数(categorical bialgebroid)を導入した. 3. 前テンソル圈, ならびに圏論的双亜代数に加えて, 前テンソル関手(pre-tensor functor)という概念も導入し, (H, X)-双亜代数のダイナミカル表現全体がテンソル圏をなすことを, より圏論的に証明した. 上で紹介した前テンソル圏, 圏論的双亜代数という概念の萌芽, すでに, XA-双代数(xA-bialgebra)の定義に見られる. 本研究では, それを前テンソル圏, 圏論的双亜代数として明示し, さらに, 前テンソル関手という概念と合わせて, 前テンソル圏の圏諭的双亜代数がテンソル圏を生み出す能力を持つことを示した.
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