研究概要 |
当該年度に実施した研究の主要な成果は以下の通りである. 1.主等質空間を用いたダイナミカル・ヤン・バクスター写像の構成. 筑波大学竹内光弘氏の指摘を発展させ,主等質空間からダイナミカル・ヤン・バクスター写像を構成することに成功した.主等質空間は変形量子化の観点からも注目され始めた研究対象で,本研究成果は,これと可積分系における重要な研究対象であるヤン・バクスター方程式を結びつけた点で重要である.現在は,この構成をあるテンソル圏での代数として実現することを目指している. 2.本補助金による今までの成果の公表. (1)[Journal of Algebra 323 (2010)の一部]ダイナミカル・ヤン・バクスター写像に付随した双亜代数を構成し,この代数に付随したダイナミカル表現全体がテンソル圏をなすことを証明した.さらには,それらに圏論的な証明を与えた. (2)[数理解析研究所講究録1647]ダイナミカル・ヤン・バクスター写像の構成に関し詳細な証明を付して他の研究の便を図った.特に,全単射1-コサイクルを用いたヤン・バクスター写像の構成と比較しながらダイナミカル・ヤン・バクスター写像の構成を説明した. (3)[Proceedings of NoMaP(Web上で公開)]ダイナミカル・ヤン・バクスター写像の圏論的な記述を記した.集合全体のなす圏Setの射やテンソル積の定義を変更して得られるテンソル圏での組紐関係式を満たす射がダイナミカル・ヤン・バクスター写像であることを示した. これら成果の公表により,ダイナミカル・ヤン・バクスター写像に関する他の研究(他大学の大学院生による修士論文;他大学の研究者との共同研究)につながった.
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