今年度の主な成果は、3次元トーリック弱ファノ多様体上のアンプル直線束はすべて単生成的であることを証明したことである。 トーリック弱ファノ多様体の反標準束は、ゴレンスタイン・ファノ整凸多面体に対応し、それが7次元以下であれば、基本単体の和に分解されて、このことから多面体が正規であることが知られている。これは、反標準束が単生成的であることを示している。 一方、3次元非特異トーリック多様体上のアンプル直線束が、その随伴束が正でなければ、単生成的であることを以前に示した。 今回は、弱ファノ多様体上のアンプル直線束の随伴束がネフだが巨大でない場合に、前年度の成果である2次元特異トーリック多様体のネフ因子とアンプル因子の和に関する定理を使って、そのアンプル直線束が単生成的であることを証明した。さらに、その随伴束が巨大である場合には、ファノ整凸多面体と任意の3次元整凸多面体のミンコフスキー和が正規であることを、代数幾何的に証明して、適用した。これにより、3次元トーリック弱ファノ多様体上のすべてのアンプル直線束の単生成性が示された。 3次元ゴレンスタイン・ファノ・トーリック多様体上のアンプル直線束について、その随伴束が正でない単生成的でないアンプル直線束の存在を示した。今年度の主結果の証明法の応用として、この多様体上のアンプル直線束の随伴束が正であれば、すべて単生成的であることを示すことができた。 最も困難な部分は、3次元非特異トーリック多様体上のネフかつ巨大な直線束の随伴束が正だがネフでない場合を藤田の結果を応用して特定し、整凸多面体め理論ではなく、代数幾何的議論で単生成的を示したところである。
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