1つ目の項目に関しては、ある種の無限体上のカッツ・ムーディ群に関して、その単純性を確かめることに成功した。これにより新たな知見を得ることができ、今後の更なる理論の整備と発展が期待される。2つ目の項目に関しては、局所アフィン・リー環の分類は殆ど終わりつつあり、研究の目的は概ね達成されてきている。あと一歩で完成に至る見込みである。これら2つの研究における考察の応用としてムーディ予想を解決することができたが、それをさらに発展させて、群の自己同型とリー環の微分作用素に関する繋がりを無限次元にまで理論を展開できる道筋をつけることができた。3つ目の項目に関しては、1次元準結晶や文字列に対して、代数的・組合せ論的アプローチを行い、群・リー環・多元環・加群などの代数系の構造解明が進展した。新しい有理性定理を発見し発表し研究成果を周知することができた。これは今までになかった全く新しい方法論による研究成果であり、多くの他の分野との関連が見つかる可能性を秘めた大変に面白い結果である。4つ目の項目に関しては、記号力学系やDNA文字列に関する数値実験を繰り返し、有理性と非有理性について配列との比較検討を行い、プログラミングの整備を行いながら、数学的な意味での必要十分条件の決定に、全力を挙げている段階である。以上、どの項目に関する研究も、概ね実施計画の予定に沿って順調に進んできている。とくに、単純性の発見、分類の完成、定理の周知、および有理性・非有理性の研究成果は、平成21年度における大きな研究実績である。
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