研究概要 |
本年度は主に基礎的部分の整理に充てた。まず最初に,今回の研究課題の方向性を十分に意識しながら,既に知られている結果の見直しを行い,改善すべき点を確認した。又,j-重複度の定義についても再検討してみた。実は,AchillesとManaresiが与えた定義とFlenner,O'Carroll及びVogelが与えた定義は,同じ値を持つ不変量にはなるものの見かけ上は異なっているのである。後者は前者の6年後に発表された論文に書いてあるのだが,その間にどのような試行錯誤が行われたのかを調べ,その上で,我々の目的の為にはどの様な定義を採用することが最良であるかを慎重に判断した。その結果,まず局所環G_0上の次数付環G=(+)n≧0G_nでG=G_0[G_1]なるものが与えられたとき,各GnのG_0-加群としての0次局所コホモロジー加群を用いてj-重複度j(G)を定義し,局所環Aのイデアルに対しては,随伴次数gr_IA=(+)_n≧0In/I_<n+1>を通してj(I)を定義するのが最良なのではないかという結論に至った。即ちj(I)=j(gr_IA)と定めるのである。その結果j(G)=j(G/fG)をみたす斉次元f∈G_1はどの程度「一般的」であれば良いかという問題をより柔軟な状況で議論することができ,計画調書にある研究目的の中で述べている「Iの元αについて必要とされる一般性」について,より明確な解答を出すことができた。
|