剰余体が正標数の閉体上の多変数の巾級数体であるような正標数の完備離散付値体の上のp進微分加群で良い性質を持つものに対し、Christol-Mebkhoutのオリジナルのフィルトレーションに近い形での高次元化の問題、および、階数1の微分加群に付随するp進微分加群から生ずるD加群についての具体的な計算を行った。 前者については、特に微分作用素のなす環を利用したフィルトレーションの構成について研究を行った。これは、これまでの研究で考察した連結成分によるフィルトレーションの双対的な概念で、同様の研究はKedlayaらによってもなされているが、彼らの手法はある意味曲線で切断して古典的な場合に帰着させるというものである。まだ完全な定義は得られていないものの、これがきちんとできれば、剰余体が閉体である場合もそうでない場合も区別なく分岐を扱えることになる。後者については、特にD加群の有限表示を具体的に構成する問題を考察した。完全に計算できるものはある意味特殊な状況に限られるが、微分加群が階数1の表現から来ている場合に、加藤和也氏、齋藤毅氏の定義した分岐についての特性サイクルと、対応する微分加群をD加群とみなした時のBerthelot氏の定義した特性多様体が異なるという結果が得られた。この現象は上で述べたフィルトレーションの構成とも関連していて非常に興味深く、その理由を考察することがp進微分方程式の立場から見た数論の研究に役立つと思われる。
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