研究概要 |
多元環とその上の加群の成す圏の代数的構造について,特にFrobenius多元環を主として研究を行った.圏の代数的性質は対象間の射の性質によって決まるが,局所的には対象自身の射,すなわち準同型多元環の性質による.この観点から,(必ずしも有限次元ではない)加群の準同型多元環でFrobenius多元環の持つよい性質を有するものについて考察した.その結果,Frobenius多元環の場合には根基と一致して隠れてしまうイデアルを抽出し,このイデアルに関する剰余多元環の(von Neumann)正則性とべキ等元の持ち上げについて,射による特徴付けを与えた.これにより,これまで知られていた(Frobenius多元環の一般化としての)入射加群の準同型多元環についての有名な古典的定理(Faith,Utumi他による)を一般化することに成功した.これを応用して正則性と持ち上げを有する新たな加群を発見した.これらの成果は2007年に東京で開催された「第5回日中韓環論シンポジウム」と「第14環論および表現論シンポジウム」の合同開催となる会議で発表した.さらにこれらはColloquium Mathematicum(ワルシャワ)から出版されることが決まっている.この研究に関して,入射加群の無限直和の準同型多元環が上述の正則性とべキ等元持ち上げを有するかという問題が今後の課題として残った. 分担者の浅芝は,加群圏の導来同値について研究を行い,これまでに分担者によって得られた定理の条件の改良に成功し,2007年にポーランドで開催された「第12回多元環の表現論国際会議」において成果を発表した.
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