本年度に得られた成果は主にふたつある。 一つめは乗法群のWeil制限を使ったクンマー理論である。自己同型環を巡回行列を使って、計算した後、そこから誘導される同種写像に対して完全なクンマー双対を証明した。また、以前得られたノルムトーラスのクンマー理論との比較定理も得た。これに関しての論文を執筆し、現在学術雑誌に投稿中である。この話題に関する研究発表を英国Edinburghで開かれた国際研究集会Journees Arithmetiquesで行った。 二つめの成果はノルム・トーラスのクンマー理論から得られる五次多項式の応用である。立教大学の横山和弘氏とパリ第六大学のGuenael Renault氏との共同研究により、Brumerの五次式と呼ばれる多項式族の同型問題を解決した。また同じ分解体をあたえるBrumer多項式の無限族をある楕円曲線を使って構成した。この成果に関する研究発表を9月に東北大で開かれた日本数学会の秋期総合分科会で発表した。この結果を英文論文にしたものが、International Journal of Number Theoryから来年度以降に出版される予定である。 さらに、Brumer多項式の定めるDihedral拡大について、研究をすすめた。楕円曲線から誘導されるクンマー列との関連を調べた。楕円曲線のツイストの有理点と、そのコホモロジー群の中での像について研究を行った。その一部は、11月に山形大学で開かれた研究集会「ガロア理論とその周辺」において発表した。この課題については、今後も研究を続け、論文もまとめる予定である。 また研究分担者である大野は、代数的トーラスの幾何学に関する知識を提供するとともに、代数多様体上の層のモジュライ空間について研究をおこない、特に安定条件についての研究をすすめた。
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