一年を通じて、4次元以上の商特異点のクレパントな特異点解消の存在について研究した。具体的には、まず4次元で群が可換な場合にトーリック幾何学を用いて、その存在可能性について考察した。そこではクレパントな特異点解消が存在する条件を考えるだけでなく、クレパントな特異点解消が存在しない場合の条件を見つけることができた。 さらに一般次元においては、群が可換な場合と、非可換な場合の関係から、クレパントな特異点解消が存在する条件についての予想をたて、その証明を試みた。この証明はまだ、一般次元では発展途上であるが、2次元の場合には、完全な証明が得られた。また3次元でも成り立つことは明らかなので、その証明をヒルベルトスキームの概念を参考にして、完成させる予定である。この証明が完成すると、現在知られている高次元マッカイ対応が、どのようなときに成り立つが判明するだけでなくて、近年盛んになっている、導来圏による議論で幾何学的性質を調べることの限界を与えることもできる。 さらに、この予想についての口頭発表を、7月にイギリスのウォーリック大学と、12月の東京大学での国際研究集会にて、行い多くの人が興味を持ったようである。 また当該年度後半は、佐藤文敏氏と共同研究も行った。曲線のモジュライ空間のトートロジカル環の生成元の帰納的関係式を得た。これは、オービフォールド・コホモロジーの研究とも関係している。この研究成果についての論文は、現在執筆中であり、来年度初めには、投稿する予定である。
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