研究概要 |
研究代表者により最近、ホップ代数の多項式不変量が定義された。この多項式不変量は、ホップ代数の組紐構造を用いて定義され、その定義の仕方から、表現圏の不変量、つまり、テンソル森田同値不変量になっていることがわかる。すでに、同じ表現環を持つ8次元の半単純ホップ代数は、この多項式不変量により区別されることがわかっているが、今回新たに、このような2組のホップ代数の例が、鈴木智支氏により定義された余半単純ホップ代数の族の代数構造を調べることにより、見つかった。彼の構成した余半単純ホップ代数の族はν,λ,N,Lによりパラメータづけされているが、このうち、ν=+の場合の代数構造を調べ、それが二面体群を部分群として含むある有限群の群代数Aと同じであることがわかった。ν=+の場合の鈴木氏のホップ代数と群ホップ代数Aとは同じ表現環を持つが、多項式不変量は異なることがわかった。 研究代表者が定義した多項式不変量はホップ代数の基礎体を係数環とする多項式であるが、興味深いことに、これまで計算したホップ代数に対してはすべて整数係数になっている。そこで、多項式不変量が整数係数となるための条件を、研究分担者の増岡彰氏にアドバイスを受けながら、調べた。その結果、ホップ代数が分解型有限次元半単純で、かつ、ホップ代数の基礎体が有理数体のガロア拡大であって、そのガロア群がホップ代数にsemilinearに作用するとき、多項式不変量は整数係数になることがわかった。特に、位数nの有限群の群ホップ代数の多項式不変量は、その係数体が有理数体に1の原始n^3乗根を添加した体であるとき、常に整数係数になることがわかった。
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